演劇企画公演【focus.】とは

ミームの心臓主宰の酒井一途が新たに旗揚げしたプロジェクト。

気鋭の若手団体を募り、与えられた特定のテーマから自由に創作、合同で上演を行う。参加団体が複数あることによって、多面的な視点で世界を眺めることができ、より幅の広い作品を観客に提示できる。
また参加した団体同士が切磋琢磨することで企画そのものの熱量が上がり、単独公演では生み出せないような祝祭的なイベント性を伴った空間を作り出すことを企画のコンセプトとする。


case.1 [神話] 公演フライヤー デザイン: サノアヤコ

第一回である今公演は「神話」をテーマに掲げ、現代社会へと切り込む。綺羅星のごとく現れシアターグリーン学生芸術祭にて最優秀賞を受賞した早稲田大学の「ハイブリットハイジ座」、同じくシアターグリーン学生芸術祭において第二回公演にして500名を越える動員を叩き出し特設賞であるプロデューサー賞を受賞した慶應義塾大学の「ミームの心臓」、企画公演『学生版日本の問題』において観客の圧倒的支持を得て大いにその名を知らしめた日本大学藝術学部の「四次元ボックス」、以上三団体でお送りする。


企画名【focus.】について

“focus”とは「焦点」の意。あるいは「震源」、また医学用語で「病巣」を意味する。「ある物事に集中させる」といった動詞としても使われる。この企画に参加した劇団を中心として、社会/時代に何かしらの波紋が広がっていくよう思いを込めた。


case.1[神話]


神話とは、ことばである。
すべてが神話でありうるのか?
そうだとわたしは思う。宇宙は無限に暗示的だからだ。
ロラン・バルト

文学に「神話的方法」というスタイルがある。「神話的方法」とは、神話と現代とを照らし合わせることで、「現代史という空虚と混乱にみちた広大な展望を支配し、秩序づけ、意味と形式とを与える手段」のことを言う。要は神話の構造を換骨奪胎して、現代を描くということだ。

なぜ神話なんかを持ち出すのかといえば、それは神話という物語の強度がとてつもなく強いからである。神話は何百年、何千年と語り継がれてきたわけで、それだけ長い時間を耐えて洗練されてきたことを示している。多くの物語が自然淘汰されていく中、大衆に認められるものばかりが残っていったわけだ。また面白いことには、古今東西の神話を比べてみると、それらは似通ったエピソードに溢れていることがわかる。人々の血を沸き立たせる物語には、必ず法則と構造があるのである。

現代において物語が失効したとはよく言われるところで、単に意味もなくお涙頂戴の物語を見せたところで、世界は一歩も前に進むことはない。停滞、それは時代の停滞である。少しでもこれに抗うためにはやはり私たちが生きている現代を俯瞰し、方向性を見出し、向かうべき方角へと足を進める必要がある。

そのために神話を用いるのだ。「現代史という空虚と混乱にみちた広大な展望を支配し、秩序づけ、意味と形式とを与える」のである。

【focus.】プロデューサー 酒井一途(ミームの心臓主宰)