過去公演

旗揚げ公演【ヴィジョン】
2010年9月1日(水)〜6日(月) @神楽坂die pratze
作・演出:酒井一途
出演:令奈 / 中田暁良 / 小池惟紀
   有吉宣人 / 手塚剛 / 毛利悟巳 / 深谷心(月猿人)

 ――夢を叶える人生を捨ててまで必要な人生なのか、それは?


■物語
 ながいながい旅路から、
 ようやく帰ってきた気がするの。
 ただいま、ただいま、私の風景。
 みなれた視界、なつかしい匂い。

 虚空に伸ばした私の手。
 その手は確かになにかを掴んだ。
 おかえり、おかえり、私の感覚。
 ねえ、見てごらん。すぐそこよ。

 ひかりをしんじて。
 ひかりをすくって。


■ 紹介文
谷賢一 氏 (DULL-COLORED POP主宰/劇作家/演出家)
こいつの作品は、オススメできない。まだきちんと上演されたものを見ていないからだ。俺がこいつに関して知っていることは、死ぬほど演劇が好きで、死んじゃえばいいほど演劇を見ていて、死ぬだろうなってくらい演劇を考えているということくらいだ。そういうことに関して言えば10代トップクラスじゃねぇの?  気になるなら観に行けばいい。俺は観に行く。そういう男が、どういう作品を作るか、気になるだろう?

伴一彦 氏 (シナリオライター)
こいつ、なにもの?

高野しのぶ 氏 (現代演劇ウォッチャー/「しのぶの演劇レビュー」主宰)
これからあなたは輝かしい成功とこっぴどい挫折を繰り返し、世の中の汚れと悲しみにまみれ、絶望に打ちひしがれることでしょう。それでもあなたの中でしぶとく生き残った純粋な心、すなわち信じる力が、暗闇の奥底から立ち現れて一筋の光を放つような、そんな作品をいつか観せてもらいたいと思っています。持ち前の清潔感と品の良さを武器に、したたかに闘ってください。



■告知映像



■声明(当日パンフレットより抜粋)
現代日本に変革を来たすものは、もはや政治でも経済でもありません。大企業は不景気の大波に乗り上げ、品質を落としてでも安値で商品提供をする傾向にあります。消費者も同じくして、如何にして安く多くを求めるかという空気が世間に蔓延し、誰もがその流れに逆らえずにいます。人件費の少ない海外に工場が移設されることで、日本人の美徳であるところの伝統的文化や繊細な技術は凋落に至り、かつて高度経済成長期の日本が戴いた栄冠の誉れは、今や見る影もありません。疲れ果てた現代日本は、迫るアジア諸国の追い上げから逃れることも出来ず、ただ茫然と俯いています。

それでは日本は終焉を迎えるのかと言えば、そういうわけでもないのです。ここは是非、変革の時代が来たと前向きに思っていただきたい。僕は今こそバブル崩壊後の日本に根強く残るイデオロギーの払拭をすべき時と考えます。そして、そのためには徹底した意識改革を行わねばなりません。
日本に意識改革を、と言うには理由があります。日本はどうも未だに欧米コンプレックスが拭えずにおり、何でもかんでも欧米の真似をしようとします。英国でも活躍する演劇人野田秀樹曰く「明治維新以後、政治と経済での不平等は乗り越えたものの、文化的自立はされていない」とのこと。米国にはブロードウェイ、英国にはウエストエンド、そして日本にはトウキョウ。三大都市とも世界を代表する劇場数、公演数を誇るというのに、日本だけには文化が国民に根付いていないのです。政治と経済は真似をする。その割には、どうして文化だけは真似をしようとしないのでしょうか。
それは、文化を国民に根付かせることが政治や経済を成り立たせる上で邪魔だからです。文化を知った国民には自我が生まれ反骨心が芽生え、体制にとって扱いにくい存在となってしまう。だから日本は文化を後ろ目で見るのです。「出る杭は打たれる」の諺からもわかるように、日本は古来より個性よりも集団性を重視します。それもすべて、体制が国民を上手く扱い、優秀な歯車として機能させるため。これを脱却するためには、やはり文化のチカラが不可欠だろうと考えます。

そう。必要なものは文化。演劇という文化は意識改革を行う上で重要なツールとなります。シェイクスピア然り歌舞伎然り、古くより演劇は社会へのアンチテーゼとしての意義を少なからず持っているものでした。現代ではメディア等の情報伝達媒体によって、その占める割合は矮小化する一方ではあります。しかしそんな現代においても演劇に拘るのは、想像力の喚起による観客への影響が他を圧倒して甚だしく強大だと信じているからです。他のどんな媒体よりも想像力を鮮明に刺激するために、観客が思考を膨らませやすい。膨らんだ思考から生まれるのは自我。アイデンティティです。
「意識改革」ではわかりにくいし、左翼的に聞こえるかもしれません。なので他の言い方をすれば、日本人が「アイデンティティを確立する」ことこそが大切。演劇を観た後には自ら頭で思考することによって、今までと異なる視点を持つことが出来ます。考えを再構築し、新たな思考を生み出す或いは許容させることが出来ます。現代日本はみんな心が狭すぎる。その島国根性が故に、日本は再び奮うことが出来ないでいるのです。なんでわざわざ他者を阻害するのか。同じ人間でも自分と他人は違うと割り切り、もっと認め合ってもいいのではないか。そう感じざるを得ないのです。
もちろんこういったことは僕が恵まれた環境で育ったからこそ言えることでしょう。でもだからこそ、そういう環境で育った人間にしか出来ないこともあるはずです。それをやることに価値がある。存在意義が見出せる。いま世界はあまりにも窮屈で、息をするにも気を遣わねばなりません。そんな世界は生きづらい。変革のために少しでも力になるのなら行動したいし、信念を持って行動することに必ず意味はあります。例えひとりの力では難しくとも、更にそこに追随する才能が現れることで変革の可能性は増していくのですから。

最後にはなりますが、本日はミームの心臓旗揚げ公演『ヴィジョン』に足をお運び下さり、まことにありがとうございました。ごゆっくりお楽しみくだされば、僕としても嬉しい限りです。


■ キャスト
 令奈
 中田暁良
 小池惟紀
 有吉宣人
 手塚剛
 毛利悟巳
 深谷心(月猿人)


■ 公演日程
 2010年9月
  1日(水) 19:30
  2日(木) 14:00/19:30
  3日(金) 19:30
  4日(土) 14:00/18:30
  5日(日) 14:00
  6日(月) 18:30
  ※受付・開場は開演の30分前


■ チケット
 公演前半(1-3日) 前売/当日1500円
 公演後半(4-6日) 前売/当日2000円
 ※ 学生割引:前売に限り、500円引(受付にて要証明)


■ スタッフ
 照明:松本大介(engin-light)
 衣裳:中埜愛子
 音楽:穂塚ミカ
 音響:佐藤大志
 美術:高木宏昌
 舞台監督:いけだとも実(くろひげ)
 演出助手:伊藤春果

 宣伝美術:KOTA OZAWA
 宣伝写真:(表面)奥山由之,(裏面)田中雄一朗
 HP:田中博巳(TETRA FILM STUDIO)

 制作:横井貴子
 広報:宮下創太、石井麻衣子
 企画・製作:ミームの心臓